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はんだ牛蒡ブログアーカイブ

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愛鷹山の思い出

熱心な大学生が世界遺産の石見銀山の岩石の一部をつい無許可で採取してしまった、という記事を見て、学生時代を思い出した。

「林学」なるものを専攻していたが、植物採集は基本中の基本。ところ構わず、これは、という木や草を見かけてはちぎって持ち帰り図鑑で調べるというのが当たり前になっていた。国立公園内や他人の庭に生えた木ということもあったりで、その度に「これは採ってもいいだろうか」ということを一応は考えたものだ。

富士山の南東にある「愛鷹(あしたか)連山」を一人で縦走した時のことだ。昼頃のバスで「十里木」で降り立ち、越前岳を目指し林道を歩いていた。日頃から東京都西部の山野の植物にはなじんでいたが、場所が変わって普段見かけない植物が多く見られた。ついいつものように、常備していた剪定バサミでチョキンチョキン枝葉を切っては買い物袋に入れていたら、後から「コラッ」という怒鳴り声が聞こえた。振り返るといかにもゴッツイ中年男性がこちらに向かって歩いてくる。「駄目じゃないか、採っていいのは写真だけだぞ。」と言われたので、「すみません。林業を専攻する学生です。植物の名前を覚えるためです。大目に見てください。」と答えると、「それじゃあ仕方ないな。本当は写真だけにするといいんだけどな。私はこの上の山小屋の管理人だ。一緒に行こう。」とご一緒させていただいた。

山小屋は無人で開放していることが多く、時々管理のために上がってこられるのだそうだ。着くと先着の男性が1人いて、一緒に管理人さんから山菜の天ぷらなどを昼真っから酒と一緒にご馳走になった。明日にかけて愛鷹連山を縦走し東海道線で天竜の近くの友人を訪ねる予定をお話すると、この山々にまつわる様々なお話を聞かせてもらって、楽しいひと時を過ごした。

この小屋で今晩は私が泊まるのだろうと当然思っておられたところ、夕方5時くらいになって、「ではこれで失礼します。」と私が言うものだから管理人さんはビックリ。どこで寝るつもりだと聞かれるので、今回の山行(さんこう)はトレーニング目的であり、その一つに「何もない山の中で悠々自適に寝ること」がある、気遣い無用だと説明したが、この辺りには富士山に近いため野犬が多いとか、凶暴なヒル(血を吸う生き物)がいるとか、山をなめてはいけないなどと、親切な説得を受けた。決してなめてはいない、これは自己鍛錬なのだと、頑として固辞し、山小屋を後にした。

越前岳の山頂で陽が沈み、そこからは薄暗い山道を行くことになった。すっかり暗くなってからはヘッドライトの明かりを頼りに進む。呼子岳と位牌岳との間の鞍部(稜線の凹んだところ)で休止し、ここで一晩を明かすことに決めた。くぼみを見つけ、枯葉を集め、そこに寝袋ごと潜り込んだ。寝袋には下半身だけを入れて、右手には鉈(ナタ)を握る。野犬が襲ってきたときのためだ。熊だっているだろう。管理人さんの勧めで塩も袋に入れて用意。「ヒルに吸われたら決して引っ張って取らずに、塩でもんで独りでに離れるのを待ちなさい。」と言われていたから。

夏ではあったが寒い。当然眠りは浅く、何度も目が覚める。夜は様々な動物の活動が盛んだ。ガサガサとあちこちで音がする。しかしこんなことは初めてではない。ようやく空が白んできて、歩けるくらいの薄明るさを待って出発。歩きに歩き昼過ぎには東海道本線の東田子の浦駅に到着した。

当時はザックを背負い、山道を何十kmあるこうが苦にならなかった。今考えてもいい体験をしてきたものだ。昼飯を食いながらのヤフートップ画面の記事を見て、つい当時を懐かしんでしまった。さあ現場に出るべ。
by tanboya3 | 2008-10-11 03:36 | 思い出

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